幹の中に根を伸ばす植物の生存本能
家に観葉植物を置こうと思い、初めて買ったのが、シェフレラ、ウンベラータ、パキラ、ユッカ・エレファンティペス(青年の木)の4種類。
当時は何も知識が無かったが、今となればホームセンター等でもよく見かける初心者におすすめの定番種だ。
全て芯止めされて大きくならないタイプだった。
買ったのが冬だったのに浅はかな知識で底から溢れるくらい水をあげてしまい、土も水はけの悪い土だったためか何日経っても全然乾かず、全部根腐れさせてしまった。
非常に申し訳ない事をした。
きちんと調べてから育てるべきだったと激しく後悔した。
いろいろ調べて、腐った根を整理し、水はけの良い土に植え替えたが、ウンベラータとパキラは完全に枯れてしまった。
シェフレラは葉を落としながらもかろうじて生き残ったが今も元気が良いとは言えない。
ユッカは幹の直径が5~6cmくらいで、買ったときには2ヶ所から葉(枝)が展開していて、3番芽が出始めたところだったが、3番芽は大きくなれずに枯れた。
植え替え後も枯れはしないが葉の緑色も薄くほとんど成長しないまま時が過ぎた。
というのも、いろいろ調べているうちに「芯止め」等の知識も得たわけだが、芯止めされていない植物のほうが好みだという事に気づいてしまったため、このシェフレラとユッカへの関心は薄れ、室内窓際で取り敢えず土が乾いたら水をやるだけで過ごした。
というか土があまり乾かないため水やり頻度も少なかった。
ある時、ユッカの幹を触ってみるとブヨブヨしていた。
幹の芯と皮の間に空間があるような感じだった。
幹がブヨブヨになると腐ってる可能性が高いのは知っていたが、特に枯れることはなかったため、そのままにしていた。
2年目の夏を迎え、植物もだいぶ増えた。
いろいろ植え替えて、ついでにこのユッカももう少し元気になってもらいたいと思い、根や幹の状態確認と植え替えを実施。
土から出してみると、太い幹の割に白くて細い根が少しだけだった。
幹の底を触ってみると中が空洞のようになっていて指がズボズボ入っていく。
この状態でよく生きていたなと感心するとともに、このままでは成育が見込めないと思った。
最悪展開している2本の枝を切り取って挿し穂にしようと考え、下の方から皮を剥いでいく。
スカスカなので剥きやすい天津甘栗のようにパリパリとすぐ剥け崩れていく。
なんということでしょう。
皮をめくるとすぐ下に根があり、下まで伸びているではありませんか。
底の白い細根は幹の下部から出ているのではなく、幹の中を這うようにもっと上から伸びている根の先端部分だった。
言葉で説明するのは難しいから図で説明。
なぜこのような状態になったのか。
【仮説1】挿し穂状態になり、幹の中に枝から根を伸ばした。
園芸では土の代わりにヤシの繊維を使うスタイルもあるが、幹の中はまさにヤシの繊維のようになっていた。
幹が腐っても枝までは腐らず、偶然ヤシガラ栽培と同じような環境になり、腐った繊維質の幹に挿し穂されたような状態になったのではないか。
通常、挿し穂は枝を切って土に挿して発根させるが、環境次第では腐った幹にぶっ挿しても発根する可能性はありそう。
自然界でも腐った樹に他の植物が根づくとかある。
でも挿し穂状態なら幹の中心部にも根を伸ばすかな?
実際は芯の中心部には根が展開されておらず、外周部分と皮の隙間を真っ直ぐ下の土まで伸びていた。
【仮説2】気根が内側に展開した。
ガジュマルなどのフィカス系から気根が出るのは何度か経験してるが、大体は土に届く前に枯れている。
湿度を高くすると気根が出やすく、土まで伸びやすくなるらしいので、現在何種類かをビニールで覆ったりして湿度を上げる実験をしている。
まだ経験した事は無いが、調べるとユッカやドラセナも枝の根元付近から気根を出す事があるらしい。
フィカス系はどこからでも気根を出すが、この枝の根元付近からというのがポイントで、おそらく主幹の状態が悪い時に、枝が主幹を捨てて自分だけでも生き残ろうと気根を出すのではないだろうか。
今回のケースは外側よりも内側の方が湿り気があって気根を展開しやすい状況になった。
芯部分をほぐすとこんな感じ。
どちらの可能性もあるが、たぶん仮説2かな。
それにしても植物の生存本能は凄いと感心した出来事だった。
枝付近まで主幹を崩し取り、2本がまだくっついている状態で、残っている根はそのままにして土に埋めた。
地上だけ見ると2本並べて植えてる感じ。
双子ちゃん元気に育つといいな。